メディカルニュース
がん治療の新たな標的
nature 2010年1月7日号
脱ユビキチン化酵素が,がんタンパク質を安定化していることがわかった。

「MCL1」は,複数の系統の幹細胞において生存に不可欠なタンパク質である。B細胞リンパ腫やマントル細胞リンパ腫,慢性骨髄性白血病などでは,MCL1が異常にたくさんつくられており,これが化学療法抵抗性や疾患再発の一因であると考えられている。ただし,がん細胞において,MCL1が過剰につくられるメカニズムはよくわかっていなかった。  アメリカ,ジェネンテック社のシュワイカート博士らは脱ユビキチン化酵素「USP9X」が,MCL1を安定化し,がん細胞の生存を促進していることを明らかにした。MCL1には,プロテアソームによって分解されるための目印となる「ポリユビキチン鎖」が結合するが,USP9Xはそのポリユビキチン鎖を除去するはたらきがある。遺伝子操作によってUSP9Xがつくられるのを抑制すると,MCL1のポリユビキチン化が増加し,MCL1は早く分解されるようになる。また,がん細胞を殺す効果のある薬剤もききやすくなる。  USP9Xを標的とした新たながん治療薬が開発できるかもしれない,と博士らは考えている。 -------------  

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