末しょう神経からの感覚情報を脊髄へ伝える中継点である「後根神経節」は,神経細胞の集まりであり,神経伝達物質の一つ「グルタミン酸」を用いて感覚情報を脊髄へ伝えている。感覚を伝える神経細胞にはさまざまな種類があるが,どの感覚神経が,炎症や外傷にともなって生じる過敏な痛みを伝えているのかは不明だった。
アメリカ,カリフォルニア大学のシール博士らは,少量の小胞性グルタミン酸輸送体「VGLUT3」を発現している後根神経節の一部の神経細胞が,機械的刺激によって生じる痛みの伝達に関係している可能性を示した。VGLUT3を欠損させたマウスは強い機械的な痛みを感じず,とくに炎症や外傷にふれただけで感じる過剰な痛みが抑制されたのである。
VGLUT3を発現している後根神経節の神経細胞は,刺激に反応しやすいことはわかっていたが,機能がよくわかっていなかった。今回,この神経細胞が炎症や外傷後におきる痛みの過剰反応において重要なはたらきをすることがわかった,と博士らはのべている。
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