メディカルニュース
抗酸化物質の2面性
nature 2009年9月3日号
 がんを抑制する抗酸化物質は,がん細胞の生存を助けるはたらきも同時にもつようだ。

 細胞は「細胞外マトリクス」とよばれる,タンパク質の集まりによって取り囲まれている。正常な上皮細胞は細胞外マトリクスに接着していないと生存できない。一方,がん細胞は細胞外マトリクスに接着していなくても生存できる。正常な上皮細胞とがん細胞に,なぜこのようなちがいがあるのかはわかっていなかった。  アメリカ,ハーバード大学のシェーファー博士らは,乳腺上皮細胞が細胞外マトリクスからはなれると,グルコースの取りこみが阻害され,細胞のエネルギー源となるATP量が減少することを明らかにした。この細胞内で,がん遺伝子の一つである「EEBB2」を発現させるとATP量が回復することがわかった。また,抗酸化物質を投与することでも,ATP量が回復することがわかった。  抗酸化物質は,がんを誘発するDNAへのダメージを抑制するとされる。一方で,今回の研究結果から,抗酸化物質は異常な細胞の生存を促進し,がんの発生を高めてしまう可能性もある,と博士らはのべている。 -------------  

CLOSE

CLOSE