薬物を利用しながらも依存していない状態から,薬物に依存する状態へとうつりかわる際の神経メカニズムはまだ解明されていない。これまでに,薬物につねにさらされていると,脳の「腹側被蓋領域(VTA)」にあるニューロンで「脳由来神経栄養因子(BDNF)」の量が増加することがわかっている。BDNFをVTAに注入すると,精神行動がするどくなったり,薬物をさがすようになったりするなど,いくつかの薬物でみられる効果が強まるという。
カナダ,トロント大学のヴァーガスペレズ博士らは,ラットを使った実験により,BDNFをVTAに注入すると,「ドーパミン非依存状態」から「ドーパミン依存状態」への移行がうながされることを明らかにした。ドーパミンとは,快感を感じさせる作用のある神経伝達物質だ。博士らは,この移行は,VTAにあるγアミノ酪酸(GABA)作動性ニューロンのGABAタイプA受容体が,「抑制性」から「興奮性」に切りかわることに関係している,とのべている。
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