多くの神経疾患は，恐怖を調節するしくみの異常がその根源となっている。
音（条件づけ刺激）が聞こえたあとに，電気ショック（無条件刺激）を受けるというように，二つの刺激をペアにすると「連想感情記憶」が形成される。
そうして植えつけられた恐怖の記憶に対して，条件づけ刺激と無条件刺激との関係性を永続的に弱める効果的な方法について，研究が進められている。
アメリカ，ニューヨーク大学のモンフィス博士らは，ラットを用いた次のような実験を行った。
まず，音を鳴らしたあとに，ラットに電気ショックをあたえ，音と電気ショックの恐怖を結びつけた。そして，その恐怖の連想が消滅する前に，電気ショックなしで音だけを何度も聞かせつづけた。すると恐怖記憶が弱められ，おだやかな記憶へと置きかわることがわかった。
この方法によって，人間でも薬物を用いることなく，恐怖記憶を永続的に弱められるかもしれない，と博士らは考えている。 -------------