ヒトは腸の粘膜に細菌が感染しても,表面の「上皮細胞」を脱落させて感染拡大を防ぐしくみをもっている。 ところが,赤痢菌を含む多くの細菌はそれを克服し,宿主(感染された生物)での感染拡大に成功している。 この克服のしくみの詳細は不明であった。 東京大学医科学研究所の金?秀博士らは,赤痢菌が「OspE」というタンパク質を使って宿主のタンパク質を乗っ取り,細胞の脱落をおさえていることを明らかにした。 赤痢菌から分泌されたOspEは宿主の上皮細胞にあるタンパク質「ILK」と結合する。 上皮細胞は「接着斑」という構造で脱落しないようつなぎとめられている。 OspEに結合されたILKは,接着斑を分解する酵素のはたらきを抑制し,接着斑を増加させるという。 赤痢菌が細胞の脱落を防ぐために特別な戦略を用いていることが明らかになった。 博士らは,ILKとOspEの結合を阻害する薬剤が開発されれば感染を防げるようになるかもしれない,とのべている。
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