CKは、「クレアチンキナーゼ」あるいは「クレアチンリン酸キナーゼ」といいます。CKは本来筋肉の中にある酵素です。したがって、このCKの値が高いということは、筋肉の細胞がこわれたことを意味します。CKの値が高くなるものに、筋ジストロフィーというめずらしい病気があります。筋ジストロフィーは、筋肉が次第に変性、萎縮していく遺伝性の病気です。 はげしい運動でもCKが上昇 CKという検査は、当初筋ジストロフィーに特異的な検査として使われていました。しかし、検査の精度が上がるにしたがって、いろいろな筋肉の疾患でもCKの値が上がることがわかってきました。最近の検査の感度では、マラソンなどの非常に強い運動でも筋肉がこわれるためにCKの値が上がることがわかっています。さらに、薬物の筋肉内注射でも上がることがわかっています。 心筋梗塞の診断に最も力を発揮 このCKという酵素には、筋肉型(CK-MM)、脳型(CK-BB)、心筋型(CK-MB)の3つのアイソザイムがあることがわかってきました。正常な状態では、ほとんどのCKが筋肉から出ているので、90%がCK-MMで、CK-BBはほとんどみられません。心筋梗塞のときにかぎってCK-MBの値が上昇します。そのため、CK値が高いときには、CK-MBが増えていることを確かめて心筋梗塞を診断します。また、CK全体の値がどれくらい上がっているかを確認して、心筋梗塞の範囲を推定します。 心筋梗塞のときにはLDH(次回掲載)やGOT(第2回掲載)の値が上昇したり、赤血球沈降速度が亢進します。しかし、CK-MBは心筋梗塞に対する特異性が非常に高く、また心筋梗塞をおこした直後からCK-MBの値が上がりはじめるので、非常に役に立ちます。心筋梗塞のときに特異的に増える心筋トロポニンTという酵素がありますが、この酵素は計測するのがむずかしいので、現在は主にCK-MBが使われています。 運動や筋肉注射によってCKの値が上がっている場合には、安静にしていれば回復します。それ以外の場合には、くわしい検査を受けて総合的に判断する必要があります。
〜 虚血性心疾患 〜 冠状動脈は、心臓の筋肉(心筋)に血液を供給しています。冠状動脈の動脈硬化が進み、血管がしだいにせまくなって、血液が十分送られなくなることを虚血といいます。虚血によっておきる心臓の疾患を虚血性心疾患といい、狭心症と心筋梗塞の二つがあります。狭心症では心筋が死なず回復しますが、心筋梗塞は心筋が死んでしまい回復しません。虚血性心疾患では胸などに痛みの症状が出ます。狭心症は数分から10分くらい、心筋梗塞では数時間つづきます。