脳の血管障害は日本人の死亡原因の第3位
脳と神経 の病気
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脳や神経の病気はいろいろありますが、いちばん患者が多いのは脳卒中です。脳卒中は脳の血管障害によって中枢神経が障害され、急激に意識障害におちいり、運動障害や言語障害をともなう疾患群のことです。
脳出血と脳梗塞
脳卒中には大きく分けて、脳出血(脳溢血)と脳梗塞があります。
脳出血は脳の血管が破れて、脳の中に血液が流れでることです。脳出血には、脳内出血とクモ膜下出血とがあります。
脳内出血とは、脳内の細い動脈が破れ、血液が勢いよく脳の中に流れこむために脳が破壊されるものです。脳内出血は、高血圧あるいは動脈硬化が原因となることが多いので、六〇代に多いです。
クモ膜下出血の患者の多くは、「動脈瘤」という動脈の変形を先天的に脳の内部にもっています。その動脈瘤がやぶれて出血するのがクモ膜下出血です。クモ膜下出血は比較的若い人(四〇代〜五〇代)がなります。クモ膜下出血の主症状は、急激にはじまる頭痛、嘔吐、悪心、意識障害などです。
脳梗塞は、動脈硬化が脳内にあって血管がつまった状態になって引きおこされます。脳梗塞には脳血栓症と脳塞栓症の二種類があります。脳血栓症とは、動脈硬化などにより脳の動脈の内腔がせまくなり、血管がつまることです。脳塞栓症とは、血栓がはがれて血流にのり、動脈につまることです。
いずれも頭部のCTや髄液検査で診断されます。血液検査ではわかりません。検査でクモ膜下出血と診断されたら、出血部の摘出手術を行います。
痴呆の症状を引きおこす疾患
患者数は少ないのですが、脳卒中以外の神経系疾患で最近話題になっているのがアルツハイマー病です。神経の細胞が脱落して、痴呆症状を引きおこす病気です。とくに前頭葉、側頭葉の脳の萎縮が目立ちます。
パーキンソン病は50歳前後にはじまる原因不明の疾患で、女性に多いといわれています。症状としては、手足がふるえる、動きがかたくなる、立ちくらみ、便秘、頻尿などの自律神経の障害などがあげられます。
アルツハイマー病、パーキンソン病ともに多少は加齢と関係しています。パーキンソン病の少数は遺伝的に発病します。しかし大多数の患者は遺伝とは関係なく、何らかの原因で中脳にある黒質の神経細胞が攻撃を受けるためだともいわれています。そのほかの原因については、かなり精力的に研究がされているところですが、はっきりとしたことはわかっていません。
治療法もきちんとしたものがあるわけではありません。こうした神経系疾患は血液検査では診断できません。
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脳研究は花盛り 〜
脳の研究はいま花盛りといわれています。脳は人体のほかの器官にくらべて、まだ解明されていない部分が多く残されている器官です。これは脳の研究が遅れたというより、脳というのはそれだけ繊細な場所だからだと考えられます。いくら遺伝子が解明されたからといって、脳についてはそれぞれの細胞のつながりがどうなっているかや、どんなふうに細胞と細胞が会話しているかなど、わかっていないことが非常に多いのが現状です。
神経についてもまだ何もわかっていないといってもよい段階ですが、多くの基礎研究者が神経の分野に注目していて、世界的に研究が進められているところです。ただし、すぐにでも成果が出るものでもなさそうです。
複雑にできている脳をすべて解明するのはむずかしいことですが、逆にすべてわかってしまうと少しさみしい気がします。
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