死因の1位を占め、35〜64歳では約半分の人の死亡原因
がん
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腫瘍には良性腫瘍と悪性腫瘍があります。一口に悪性腫瘍のことを、日本ではがんといっています。
ただし、病理学的には悪性腫瘍のなかでも内胚葉由来のものをせまい意味の「がん、あるいはがん腫」とよび、中胚葉や外胚葉由来のものを「肉腫」といっています。
がんは死因の1位を占めていて、35〜64歳の年齢層では約半分の人の死亡原因となっています。日本人の約三割ががんで死亡しています。部位別で死亡率が高いのは、男性では、肺がん、胃がん、肝がん、大腸がん、膵がんの順で、女性だと、胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、肝臓がんの順です。従来多かった胃がんや子宮がんの死亡率は減少傾向にあります。
がんの原因
がんの原因は多くの研究でわかってきています。1つは化学物質、あるいはがんを発生させるがん物質です。魚のこげたものなどが胃がんを誘発することや、たばこのニコチンタールが肺がんを誘発することなどが有名です。
もう1つは放射線です。原子力発電所で事故がおきたあと、白血病や甲状腺のがんがふえるというのは、放射線が発がんに関係しているからです。普通にはあまりない病気です。
もう1つはウイルスやそのほかの感染です。いちばんはっきりしているのはATL(成人T細胞白血病)が「HTLV−I」というウイルスでおきるということです。このことは日本の研究者によって発見されました。
これ以外にも、子宮頸がんや肝がんなどの発症にウイルスが関与していることが知られています。そのほかのがんについては、はっきりした原因がないので、まだ研究されています。
自覚症状がもっとも大事
がんの診断で、いちばんたいせつなのは自覚症状です。自覚症状がないままがんが進行することもありますが、一般には症状があるものが多いです。がんが手遅れになるのは、がんそのものに原因があることもありますが、普通は自覚症状があってもほっておいたりするからです。
がんの検査で、いちばん診断が確かなのが画像診断です。胃がんや大腸がんなど、消化管のがんは内視鏡検査でみつけることができます。さらに生検(生体組織の一部を切り取って、病理組織学的に診断すること)でもみつかります。肝がんやそのほかの内臓のがんは、エコー(超音波)検査やCTなどの画像診断が有効です。脳腫瘍などもこうした検査でみつかります。 |
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血液の検査では腫瘍マーカーがありますが、これはある程度がんが大きくならないと数値があがらないのが普通なので、早期診断にはあまり役立ちません。ただし、治療の効果を確認したり、再発を確認したりするときなどには有効なものが多いです。
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肝がん |
肝がんには、肝細胞から発生する肝細胞がんと、肝臓内の胆管の上皮細胞ががん化する肝内胆管がんがある。肝細胞がんのほうが多く、大部分は肝硬変から生じるが、慢性肝炎から発生することもある。腫瘍マーカーではAFP(アルファフェトプロテイン)が特異的に陽性になるが、なかには陽性にならないものもある。しかし治療の経過観察や再発の発見には欠かせない検査である。 |
大腸がん |
発生部位によってS状結腸がん、上行結腸がん、直腸がんなどとよばれる、結腸がんと直腸がんの総称。原因には、繊維質が少なく、脂肪分が多い食生活が関与している。そのほかには遺伝子の関与も指摘されている。症状としては、肛門からの出血、便への血液の付着、便が細くなる、疼痛(ずきずきと痛む)などだが、病巣が小さい場合には無症状に経過することが少なくない。近年、増加の傾向にある。 |
胃がん |
胃がんによる死亡率は減少傾向にあるが、日本人ではいちばん発生率が高い。原因は不明。食事の内容、胃潰瘍の原因ともいわれるヘリコバクター・ピロリの感染、遺伝など多くの要因が関係している。魚のこげたものや、塩分の多い食事もがんの発生を誘発するといわれている。胃部の不快感、上腹部痛、嘔吐、体重減少などの症状がおこることもあるが、症状がないことも多い。 |
脳腫瘍 |
脳腫瘍の種類は多く、それにより発症から経過、症状は異なる。神経膠腫が最も多く、全体の3分の1を占める。朝方の頭痛、吐き気をともない、発生部位に関する神経症状があらわれる。 |
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