夏場の食中毒



宇部内科小児科医院(内科)
團  茂樹

冬から春にかけて見られる感染性胃腸炎は、ウイルス起因が主であるが、この場合には、ほとんど、抗菌薬は不要であることが多い。しかし、夏、特に食品媒介が疑われる場合には、細菌起因が多く、抗菌剤の投与が必要な局面にしばしば遭遇する。抗菌剤投与の適応としては、1)38℃以上の発熱 2)一日10回以上の下痢 3)血便 4)腹痛や嘔吐などのうち、下痢項目を含む2項目以上があること。しかし、小児や高齢者および、糖尿病や、肝臓、腎臓疾患など礎疾患を有する人は、これより症状が軽くても、抗菌剤の投与を考える。細菌性胃腸炎の発症の仕方で特徴がある例として、ブドウ球菌食中毒は、摂食2~3時間後、突然悪心、嘔吐、腹痛をきたし、下痢や発熱は見ない。感染源は、調理者の手指の化膿巣である例が最も多い。ほとんど24時間以内に軽快し、抗菌剤が不要なことが多い。また、カンピロバクターは1~7日と潜伏期が長く、治療はクラリスロマイシンなどマクロライド系を使う。その他の細菌性胃腸炎は、潜伏期は数時間であり、上記の条件があれば、検査と平行しながら、ニューキノロン系薬剤を投与する。多くの感染性胃腸炎で、抗菌剤が必要なときは、ニューキノロン系が、優れた抗菌力と組織移行性で第一選択となると思われる。


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